CNC精密試作と小ロット加工

見積り構造 · コスト分岐点 · 能力の境界 · 代表用途 · 6ステップの進め方

ホーム/調達ガイド/CNC精密試作と小ロット加工:1個から1000個までのコストと進め方

1個の見積りは安く見えるのに、50個になっても単価が下がらない。試作と小ロットは別の商品で、前者は一時的な段取りを、後者は安定性を売っているからです。本稿はその数字を分解します。

めっきライン:薬液槽の上に吊り下げられた治具、奥へ続く槽列
自社および協力会社の表面処理ライン。小ロットで最も見落とされるコストがここにあります。アルマイト・めっき・PVDは槽単位で課金されることが多く、50個の仕事が200個分で請求されると単価が跳ねます。

同じ図面を出して、1個の見積りが「材料3,000円、加工8,000円」だったとします。そこで50個と伝えると、単価は8,000円の3分の1には程遠い。ここで「見積りに何か隠しているのでは」と思うのが普通です。

多くの場合、隠していません。試作と小ロットは別の商品です。試作は一時的な段取り(プログラミング、治具、初品検証)を売り、小ロットは安定性(工数、工装、工程抜取、表面処理ロット)を売っています。本稿は購買の視点で、この数字を分解します。どこにお金がかかり、分岐点がどこにあり、能力をどう確認し、工程をどう組むのか。

1. 試作と小ロットは見積りの論理が違う

項目試作(1~5個)小ロット(10~500個)
目的設計・公差・組立の検証ロットの一貫性と安定納入
支配的なコストプログラミング+段取り+初品検査機械工数×数量+工装の償却
見積り方式一式(1個あたり/案件あたり)費目別(材料/工数/段取り/表面処理/検査)
交渉余地小さい。値引きより設計変更が有効中程度。工装と段取り計画で交渉できる
つまずきやすい点公差と外観基準が決まっていない初品は通ったのに量産でじわじわ外れる

この表が理解できれば、「試作は安く量産は高い」は不思議ではなくなります。逆に、試作の一式価格から小ロット単価を類推すると、概ね2倍以上の誤差が出ます。購買で最も多い見積り誤りのひとつです。

2. CNC精密試作・小ロットの見積り構造:7つの費目

費目1個試作での比率100個小ロットでの比率交渉可否
材料10~20%25~40%可:グレード、素材形状、共同購買
プログラミング・後処理20~35%3~6%不可:削った分は手直しで戻る
工装・段取り10~20%5~12%可:簡易治具で専用治具を代替
機械工数20~30%30~45%可:公差と工具経路の見直し
工具消耗3~8%5~10%限定的:チタン・ステンレスは厳しい
検査10~15%5~8%不可:初品報告書は省略できない
表面処理5~15%10~25%可。ただしMOQの確認が先

2.1 表面処理:槽単位か、個数単位か

見落とされやすい2点が、実は価格差の主因です。

ひとつは表面処理のMOQ。アルマイト、めっき、PVDは槽単位で課金されることが多く、最小ロットは50~200個、あるいは最低課金で設定されます。50個の仕事が200個分で請求されると、小ロットの総額は10%以上上がります。自社または長期協力の表面処理ラインを持つ工場なら実数で精算できます。小ロットの見積りで最も差がつく項目であり、最初に突っ込むべき質問です。

2.2 プログラミング:底値を自分で計算する

もうひとつはプログラミングがゼロには薄まらないこと。複雑な部品でプログラミング4時間、1個20分なら、12個でようやく釣り合います。50個でも初品価格の55%程度にとどまります。確認は簡単で、プログラミング工数と1個あたりの加工時間を出してもらい、割り算すればその部品の「底値」が見えます。

3. コスト分岐点:1個から1000個までの単価カーブ

数量単価指数その時点の支配コスト購買側の打ち手
1個100プログラミング+段取り工程検証に使う。値引き交渉は不要
10個45~55段取り段取り方法を協議:軟爪、複数個の同時チャック
50個30~38機械工数簡易治具を入れて納期を固定
200個20~26工装の償却専用治具と段取り優先度を交渉
1000個14~20材料と効率年間枠組み、材料の共同購買

数字より形が重要です。1個から50個の下落が最も急で、50個以降は地道な改善になります。したがって小ロットの交渉点は単価ではなく、段取り方法、簡易治具を起こすか、他の案件と機械を共有できるかの3点です。このどれか1つが決まれば、5%の値引きより大きく効きます。

4. 能力:小ロットが成立するかを決める4本の線

小ロットが難しいのは精度ではなく、「割に合わない」からです。台数の多い工場は小さすぎると見なし、単工程の工場は受けきれません。だから判断材料は工場の規模ではなく、次の4本の能力線です。

能力金立方の範囲小ロットにとっての意味
最小ロット1個から、最低金額の設定なし数量を水増しして発注しなくてよい
プログラミング・後処理3軸/4軸/5軸同時RTCPを全機標準装備曲面部品の試作を二次外注しなくてよい
段取り方案軟爪、真空、専用治具10~200個の帯域は簡易治具でコストを抑える
工程範囲旋削・フライス・研削+協力表面処理ライン外注が1工程減れば2~3日短縮
検査ミツトヨCMM、2.5次元画像測定機、初品全寸法報告初品で数値が出る。目視判定に頼らない
納期試作3~7日、小ロット7~15日試作と量産が同一工場。再監査が不要
金立方の検査室:ミツトヨ三次元測定機、2.5次元画像測定機、定盤と測定具
当社の検査室。小ロットを受けられるかは三次元測定機の有無ではなく、初品報告書に実測値があり、どの測定器で測ったかが書かれているかで決まります。

4.1 最小ロット:1個が背負う固定費

1個から受けるというのは掛け声ではありません。プログラミング、段取り、初品検査という固定費を、その1個が全部背負うということです。だから1個の単価では材料の比率が1割程度にしかなりません。試作見積りが高く見える理由もここにあります。後工程の量産が前提にしている工程検証を、1枚の請求書で先に払っているのです。

4.2 納期:実際に詰まる3か所

納期は主軸ではなく、3か所で詰まります。特殊グレードの材料入荷(3~7日)、表面処理の槽の空き(繁忙期は3~5日)、三次元測定機の順番待ち(1~2日)です。期限が厳しいときは「最短で何日」ではなく、この3つの枠を確認するほうが役に立ちます。

5. 代表的な5つの用途

この5つの用途をCNC精密試作・小ロットの段取りに載せると、共通点が見えてきます。どれも図面には描けますが、組み付けて初めて成立するかどうかが分かるのです。だから試作を経てから量産する意味があります。

用途代表部品試作してから量産する理由
新製品の構造検証筐体、ブラケット、パネル組立関係と外観は図面では判断できない
設計変更の多い民生機器イヤホン筐体、加飾部品金型を起こす前に、CNCで質感・色・音腔を検証
ロボット関節と伝動関節筐体、PEEKギア公差チェーンと軽量化は組み付けて初めて露見する
医療・自動化設備ステンレス・チタンの小物単価が高く、不良の損失が試作費を大きく上回る
液冷・光通信冷却プレート、TOステム、フェルール気密性と同軸度は実測が必要。図面だけでは決まらない

6. 進め方:6ステップ、各段階に成果物

ステップご提供いただくものお渡しするもの期間
1 要件提出STEP+PDF、材料グレード、数量、希望納期DFM意見(緩和可能な公差の提案を含む)24時間以内
2 工程評価重要公差と外観基準費目別見積り:材料/工数/段取り/表面処理/検査24時間以内
3 試作・初品初品の確認ポイント実物+初品全寸法報告書3~7日
4 小ロット試作発注数の30%試作報告とロットデータ5~10日
5 量産納入梱包・ラベルの要件全寸法抜取記録+出荷報告7~15日
6 振り返りと改善前ロットの課題リストコスト低減案:工装、材料、公差四半期ごと

7. 発注前に確認すべき7つの質問

1. 試作と量産は同じ工程ルートですか。機械や段取りを変えると、初品検証は一度無効になります。

2. 表面処理の最小ロットは何ですか。槽単位、個数単位、最低課金の3通りで、計算結果は15%変わります。

3. 初品報告書にはどの寸法が入り、どの測定器で測りますか。「合格」だけの報告書は報告書ではありません。

4. 前ロットの歩留まりデータは出せますか。ロットデータが出せない場合、工程管理ではなく出荷前の選別である可能性が高いです。

5. 簡易治具の費用は単価込みですか、別建てですか。別建てのほうが透明で、その支出が妥当かも判断できます。

6. 納期はいつから起算しますか。図面受領、初品承認、材料入荷の3通りで1週間変わります。

7. 不具合時の手直しと送料は誰の負担ですか。契約に書くほうが、後からの交渉より有効です。

金立方は深センで十数年、精密加工を続けてきました。お受けするCNC精密試作・小ロット案件の8割以上は、試作を経てからの量産です。試作費を二度取りたいからではなく、初品の数十点の実測値が、どんな口約束よりも早く組立上の問題を露出させるからです。設備と工程の範囲は加工能力、5軸CNC加工、複合旋盤を、品種は製品紹介をご覧ください。

8. よくある質問

試作費は無料にできますか?

まず、無料にした分がどこへ行ったかを確認してください。透明なのは、一定数量以上の初回発注で試作費を相殺する方式です。「試作無料」を掲げる場合、単価に織り込むか、初品検査の基準を下げていることが多いです。購買にとっては、実測値の入った初品報告書のほうが数百円の節約より価値があります。

1個と50個で単価が何倍違うのが普通ですか?

単純な形状なら2.5~4倍、複雑な曲面部品なら1.8~2倍程度まで縮みます。プログラミングの比率が高く、数量で薄まらないからです。差が2倍を大きく下回る場合、1個の見積りが高いか、50個が別の工程ルートかのどちらかです。一貫性を確認してください。

10~50個の小ロットの納期はどのくらいですか?

標準的な材料と形状で7~15日、うちプログラミングと初品に3~5日かかります。長期化の主因は加工ではなく、表面処理の槽の空きと材料入荷です。発注前にこの2つの枠を確認してください。

初品は合格なのに、量産で外れるのはなぜですか?

よくある4つの原因は、機械や段取りの変更、工具摩耗に対する補正漏れ、材料ロット間の硬度差、治具の繰り返し位置決め精度不足です。対策は、初品報告書に機械番号と治具番号を記載させること、そして初品だけでなくロット抜取データを求めることです。

20個でも金型を起こす価値はありますか?

通常はありません。ダイカスト型や射出成形型は数千個でようやく償却できます。20個ならCNCで直接加工するほうが、単価は高くても型代も変更リスクもなく、設計も動かせます。設計が固まり年間数量が安定してから再検討してください。

図面をお送りください。まず費目別見積りを

1個から承ります。24時間以内に費目別見積りをお出しし、試作と小ロットは同じ工程ルート・同じ設備で進めます。ご縁がなくても、比較の基準としてお使いいただけます。

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ご要望をお知らせください。24時間以内に正式なお見積書をご返信します。情報は見積りの目的のみに使用し、厳守秘密で扱います。

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2D図面+3Dモデル(STEP / IGES)+数量の3点があれば十分です。材料費・工数・プログラム・外注・検査を分けて記載し、無料のDFMシートを同封します。図面確認の電話はいたしません。

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